「フッ……計画通りだ。」
闇夜にたたずむ青年が、ひとり呟く。その名はシド。表向きはどこにでもいる平凡な学生だが、心の奥底では“陰の実力者”に憧れ、己の妄想を楽しむ日々を送っていた。ところが、その“設定遊び”が実は現実の巨大な陰謀とリンクしていたとしたら……?
坂野杏梨によるコミカライズ作品『陰の実力者になりたくて!』は、まさにこのギャップを最大限に活かした異世界ファンタジーコメディだ。物語の主人公シドは、自分を主役にもラスボスにも据えることなく、あくまで「陰から操る存在」になりたいと望む。彼にとって、すべては“演出”であり、“雰囲気”である。だがその妄想が現実の世界の真実と重なり、シドの一挙手一投足が世界を揺るがしていく。
特に今回のエピソードでは、ラウンズ第五席フェンリルが登場。彼は「ディアボロスの右腕」の解放を目論み、学園の生徒たちを謎の首輪で脅迫する。平和な日常が一変し、学園は恐怖に包まれる。そんな中、騒動に立ち上がるのは、なんと“パリピ男を夢見る”地味キャラ、スズーキ・ホープ。普段は目立たない存在である彼が、この事件をどう切り抜けるのか。そしてシドは“陰の実力者”としてどのように暗躍するのか。笑いと緊張感が絶妙に入り混じる展開が読者を魅了する。
この作品の最大の魅力は、「勘違い」と「本物」の奇跡的な噛み合いにある。シドはあくまで「俺の設定、超カッコいいだろ?」というノリで行動しているが、実際にはそれが圧倒的な戦力として機能してしまう。彼の放つセリフや立ち振る舞いは、読者にとってはギャグでありながら、作中人物にとっては絶対的な威厳を持つ。この二重構造が生み出す笑いは他作品にはないユニークなものだ。
また、シドが率いる組織「シャドウガーデン」の存在感も圧倒的だ。彼がなんとなく作った組織は、今や世界規模で暗躍する強大な集団となり、ディアボロス教団との壮絶な戦いを繰り広げる。そのメンバー一人ひとりにも個性と物語があり、ただの脇役ではなく、読者に愛される存在となっている。
そして忘れてはならないのが作画の迫力だ。バトルシーンでは緻密な描線とダイナミックな演出が炸裂し、キャラクターの能力が躍動感を持って表現される。一方でギャグシーンではデフォルメを効かせた表情が炸裂し、シリアスとコメディの落差が一層楽しさを引き立てる。
『陰の実力者になりたくて!』は、ただの異世界ファンタジーでも、ただのコメディでもない。両者の境界を巧みに行き来することで、読者に「こんな展開ありか!」と驚きを与え続ける稀有な作品だ。特に「陰の実力者」という独自のコンセプトは、一度ハマると抜け出せない中毒性を持っている。
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もしあなたが「最強キャラもの」に飽きたと感じているなら、この作品はまさに革命的な一冊になるだろう。シドの妄想と現実が絡み合う瞬間、物語は爆発的に加速する。笑えて熱くて、ちょっぴり切ない――そんな唯一無二の冒険譚を、ぜひその目で体験してほしい。