『メダリスト』──夢を懸ける氷上の物語、心を震わせるフィギュアスケート青春譚!

7

「負けない……今度こそ。」
リンクの上で小さくつぶやく少女・いのりの姿がある。その目には恐れではなく、揺るぎない決意の炎が宿っていた。彼女の前に立ちはだかるのは、才能に恵まれた少年・光。そして彼の背後には、世界を知るメダリストの存在がある。だが、いのりにはいのりだけの強さがあった──それは、決してあきらめない心だ。

つるまいかだの『メダリスト』は、氷上に人生を懸ける若者たちを描く、圧巻のスポーツ漫画だ。夢に破れた青年コーチと、まだ可能性すら気づいていない少女スケーター。この二人が出会った時、物語は静かに、しかし確実に熱を帯びていく。

作品の魅力は、ただ「スポーツの勝敗」を描くにとどまらない。練習の苦しさ、努力の果てに得られる小さな喜び、そして仲間との絆。すべてがリアルで、読者はまるで自分もリンクの上に立っているかのような緊張感を覚える。氷上の冷たさと観客の熱気、そのコントラストが見事に紙面から立ち上がってくるのだ。

最新巻では、ジュニアのいのりとノービスの光、異なるクラスに属する二人が唯一同じ舞台で戦える「全日本ジュニア」が描かれている。いのりにとっては、以前敗れた光への雪辱戦。だが、光もまたいのりの成長を敏感に感じ取り、自らをさらに磨こうと海外のトップ選手に師事する。この緊張感あふれる構図が、読者の心をつかんで離さない。

さらに印象的なのは、試合当日に起こる予期せぬアクシデントだ。いのりを支えてきた先輩スケーター・いるかが練習中に怪我を負ってしまうのだ。この出来事は、いのりにとって大きな動揺をもたらすが、同時に「自分がやらねば」という強烈な使命感を芽生えさせる。仲間を想い、自らを奮い立たせる彼女の姿は、単なるスポーツ選手を超えて“戦う人間”そのものを映し出している。

『メダリスト』が特別である理由のひとつは、フィギュアスケートという競技の美しさを余すところなく表現している点だ。氷の上で舞うスピンやジャンプの一瞬一瞬が、まるで生きた映像のように描かれている。衣装の煌めき、氷面に映る光、観客席からの息を呑むような視線。読者はその場の空気を肌で感じることができる。

また、キャラクター同士の人間関係も物語を豊かにしている。コーチとして夢を託す青年・司は、自らの挫折を抱えながらも、いのりを育てることで再び未来に挑もうとする。その姿はまさに「人生を二人分懸ける」という作品のテーマそのものだ。光もまた、いのりの存在を通じてライバルであり仲間でもある関係に育っていく。対立と共鳴、その絶妙なバランスが読者の心を揺さぶる。

この作品を読むと、誰もが自分の人生の中で挑戦した瞬間を思い出すだろう。小さな成功、悔しい敗北、そしてそれでも前に進もうとする気持ち。『メダリスト』は、そんな普遍的な人間の姿を、フィギュアスケートという芸術的な競技を通して描き切っているのだ。

まだ読んだことのない人は、まずは試し読みから触れてみてほしい。以下のサイトで無料試し読みが可能だ。

eBookJapan https://ebookjapan.yahoo.co.jp
コミックシーモア https://www.cmoa.jp
ピッコマ https://piccoma.com

きっとページをめくるごとに胸が高鳴り、氷の上に立つ彼らの声が聞こえてくるはずだ。『メダリスト』はスポーツ漫画という枠を超え、人生の希望と情熱を描く珠玉の青春譚である。


上部へスクロール