「飛信隊、突撃――!」
乾いた風が吹き抜ける大地に、無数の兵士たちの雄叫びがこだまする。先陣に立つのは、かつて下僕の身分から成り上がった若者・信。その眼差しはただひとつ、天下の大将軍を目指す未来に向けられていた。
原泰久による『キングダム』は、紀元前の中国、戦国七雄が覇権を争った動乱の時代を舞台にした歴史大河漫画だ。2006年から連載が始まり、いまや累計発行部数は数千万部を超える超人気作品。単なる歴史再現に留まらず、キャラクターの生き様、戦の迫力、人間ドラマの深みが絡み合い、読者を一気に戦国の渦へと引き込む。
主人公・信は、孤児で下僕として育ちながらも「天下の大将軍になる」という大志を抱き、戦場に身を投じる。彼の隣には、後に始皇帝となる少年・政(のちの嬴政)。二人は互いを支え合い、乱世を切り拓いていく。
今回注目のエピソードは、紀元前230年、韓攻略戦。秦軍は第二の都市・南陽を無血開城させ、その勢いのまま王都・新鄭へ進軍を開始する。舞台は王都目前の英呈平原。韓軍が必死の布陣で迎え撃つ中、副将を任された信は、自らの部隊を率いて圧倒的な士気で戦場を駆け抜ける。
『キングダム』の最大の魅力は、戦場の熱気と人間模様が渾然一体となった描写だ。兵士たちの心の揺れ、武将たちの知略、そして若き信のひたむきな闘志。血で血を洗う戦乱の時代でありながらも、そこには確かに「夢」を追いかける若者たちの姿がある。
信が率いる「飛信隊」は決して精鋭揃いではない。仲間たちはそれぞれ欠点や過去を抱えながらも、信の人柄に惹かれ、ひとつの軍団としてまとまっていく。その姿は、読者に「自分も信についていきたい」と思わせるほどの魅力を放つ。
さらに、『キングダム』は実在の歴史をベースにしていながら、徹底した取材と独自の解釈で物語を再構築している点も秀逸だ。地理や軍事戦術の描写はリアルでありながら、キャラクターたちの人間臭さが強烈に描かれ、歴史ファンだけでなく幅広い層に支持される理由となっている。
韓攻略戦の行方は、やがて秦による中華統一へと繋がる大きな転換点。信が副将としてどう戦い、仲間と共にどのように成長していくのか。彼の一挙一動に目が離せない。
試し読みができる代表的なサイトはこちら:
eBookJapan https://ebookjapan.yahoo.co.jp
コミックシーモア https://www.cmoa.jp
ピッコマ https://piccoma.com
『キングダム』は、ただの歴史漫画ではない。そこには夢を追い、仲間を信じ、困難を乗り越える人間たちの姿がある。戦乱の世を生き抜く彼らの熱き魂は、きっとあなたの心にも火を灯すだろう。