配信ドラマが「ここまでやるのか」と思わされたのは、いつぶりだろう。
正直な話、ABEMA発のオリジナルドラマと聞いて構えていた。恋愛リアリティショーの延長みたいなやつだろう、と。それが完全に間違いだったと認めざるを得ない。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』は、2023年に関西テレビで放送された前作の勢いをそのままに、舞台をタイ・バンコクに移してスケールを一段どころか三段くらい上げてきた本格クライムアクションだ。
ATP賞ドラマ部門奨励賞受賞、第1話は放送3日で120万再生突破。数字だけ見れば「話題作」の枠に入るが、実際に全8話を通して見ると、話題になって当然だと納得してしまう。
桐谷健太という”座長”が全てを動かしている
まずこの作品を語るうえで避けられないのが、主演・桐谷健太の存在感だ。元ヤクザで、政治・経済・芸能・裏社会のあらゆる情報を握る謎の情報屋「インフォーマ」こと木原慶次郎。桐谷がこの役にハマりすぎていて、もはや「桐谷健太の当たり役」と断言していいレベル。
豪放磊落でどこか飄々としていて、かと思えば相手の急所を一瞬で見抜く鋭さを持つ。この緩急を自然にこなせる俳優は少ない。共演者が口を揃えて「座長」と呼び、二宮和也が「桐谷健太が座長となっている現場は気持ちが良かった」と語るだけの器が、スクリーン越しにも伝わってくる。
対する佐野玲於(GENERATIONS)演じる記者・三島は、木原に振り回されっぱなしの”ポンコツ”ポジション。ドブ川に落とされ、拷問され、パンツ一丁にされ、タイの灼熱の中で撃たれる。監督の逢坂元が「思いつく限りムチャ振りした」と笑うように、佐野の体当たりぶりが作品のリアリティを底上げしている。
二宮和也の配信ドラマ初出演が「こう来るか」
そしてこの新シリーズの最大の目玉が二宮和也の参戦だ。演じるのは警視正・高野龍之介。配信ドラマ初出演という話題性もあるが、ニノファンにとっては想像を超える体験になるはずだ。
序盤は誠実な参事官として事件を追う高野。後輩にコーヒーを奢り、柔らかい笑顔を見せる。ところが第5話、かつての上司を射殺した直後の高野の表情がすべてを変える。セリフなし、ただ道路に転がる遺体を無表情で見つめるだけ。「顔つきが怖い」「こんなダークサイドなニノ待ってました」と視聴者が沸いたのも納得で、二宮和也という俳優が持つ表現の引き出しの深さに改めて驚かされた。
さらに言えば、本作には高橋和也、森田剛も出演しており、元ジャニーズのスターたちによる壮絶な”負のリレー”がラストの衝撃を何倍にも増幅させている。最終話を見終えたときの感情は「凄まじかった」の一言に尽きる。
<PR> 気になっているなら、もう見始めたほうが早い
ここまで読んで興味が出ている人は、正直これ以上レビューを読む必要がない。全8話、1話約50分。週末に一気見すれば半日で終わる。
<AD>
ABEMAプレミアム月額1,180円で全話見放題。広告ありでもいいなら月額680円のプランでもプレミアム限定コンテンツは全部見られる。映画館でポップコーンとドリンクを買う金額で全8話+出演者アフタートーク映像まで楽しめるのだから、コスパで文句を言う余地がない。
タイロケの映像力が地上波では出せない圧を生んでいる
本作の大きな強みは、タイ・バンコクでの本格ロケだ。トゥクトゥクでのカーチェイス、現地の大通りを封鎖しての撮影、桐谷健太が「地元の人も入らない」川にダイブするシーンなど、日本のテレビドラマでは絶対に実現しないスケール感がある。
撮影を手がけたBABEL LABELのチームは、映画『正体』や『ヤクザと家族』で知られる藤井道人が企画・プロデュース。そのフィルム的な質感がドラマ全体に行き渡っている。特に夜のバンコクの街並み、ネオンの反射、湿度すら感じさせる空気感は見事だ。
池内博之演じるヴィラン・鬼塚のバンコクでの存在感も特筆に値する。元刑事でありながら「インフォーマ」を名乗り、現地マフィアに情報を売り捌く男。その背景に隠された悲劇が後半で明かされたとき、単純な善悪では語れないドラマの奥行きが一気に立ち上がる。山田孝之がタイでマッサージ店を営むトビオ役で出演しているのも、ファンにはたまらないサプライズだ。
ただし、万人向けではない
良い点ばかり書いても信用されないので、引っかかる部分も正直に書く。
気になった点:
- 前作を見ていないと人物関係がやや分かりにくい。今作から見ても理解はできるが、木原と三島の関係性、冴木の立ち位置は前作を知っていたほうが倍楽しめる
- 全8話の中で展開が急加速する箇所があり、伏線の回収がやや駆け足に感じる部分がある
- 暴力描写・拷問シーンがかなり直接的。地上波では放送できないレベルの表現が複数あるため、苦手な人には正直キツい
- 後半の「巨悪」の正体に対して、動機の掘り下げがもう少し欲しかったという声もある
こんな人に向いている/向いていない
向いてる人:
- 邦画クライムサスペンスが好き。『ヤクザと家族』『孤狼の血』のラインが刺さる人にはドンピシャ
- 桐谷健太のファン。文句なしの当たり役
- 二宮和也のダークサイド演技に興味がある人。配信ドラマ初出演にして衝撃のパフォーマンス
- 海外ロケのスケール感がある日本ドラマを探している人
向いてない人:
- 暴力・拷問描写が苦手な人。容赦がない
- ライトな恋愛ドラマを求めている人。ジャンルが根本的に違う
- 前作を見る時間がない人。見なくても分かるが、体験の密度は確実に落ちる
まとめ——配信ドラマの「天井」を更新した一作
地上波では制約が多すぎて作れない。Netflixでは日本のリアルな裏社会の空気を出しきれない。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』は、ABEMAという場だからこそ成立した作品だ。前作がNetflixで2位を取ったとき、チームの反応は「嬉しい」ではなく「悔しい。1位を取りたい」だったという。その悔しさが画面の隅々にまで染み込んでいるのが、見ていて伝わってくる。同ジャンルの地上波ドラマと比較しても、映像のスケール感・キャストの本気度・脚本の攻め方のすべてで頭一つ抜けている。配信ドラマの「天井」を更新した一作と言っていい。





